これまで「未来のスーツ」というテーマで、スーツが伝える信用や、そこに通す意志、生地が語るメッセージについて書いてきました。
今回は、その中でも特に「女性が着るスーツ」について考えたいと思います。
女性のスーツは、誰のために、何を基準につくられてきたのでしょうか。
そして、これからの女性のスーツは、どのような服であるべきなのでしょうか。
日本の女性のビジネススーツは、女性が社会の中で働く場所を広げていく歴史とともにつくられてきました。
1985年に男女雇用機会均等法が公布され、翌年に施行されます。
女性が企業の基幹的な仕事へ進む道が制度として開かれ、1990年代後半以降には、女性向けのリクルートスタイルも形づくられていきました。
けれど、そのとき仕事の場にすでに存在していた服装の基準は、男性のビジネススーツでした。
大きな肩で、強く見せる。
身体を締め、緊張感をつくる。
襟や色によって、正しさや権威を示す。
女性が社会の中で認められるために、男性と同じように強く、隙なく、感情を見せず、揺るがない存在に見せる。
女性のスーツには、男女平等へ向かう意志が込められていた一方で、男性中心の社会へ適合するための型も残されていたのではないでしょうか。
多くの人に売れる服が、女性の身体を型へ当てはめた
現在の女性用スーツの形に影響を与えた、もう一つの大きな変化が、既製服の発達です。
日本では1960年代に、百貨店を中心として婦人服の号数やサイズの統一が進められ、1970年代には既製服が急速に普及しました。
多くの人へ、同じ品質の服を、効率よく届ける。
この仕組みによって、女性は洋服を手に入れやすくなりました。
その一方で、一人ひとり異なる身体を、決められたサイズと型へ当てはめる仕組みも生まれました。
さらに、企業の服装規範や、採用の場で失敗したくないという心理、就職情報や服装指導、売れやすい商品へ在庫を集中させる販売の仕組みが重なります。
比較的自由だった女性の仕事服は、次第に「間違いなく見える色と形」へ収束していきました。
それは、女性自身が本当に表現したい姿だったのでしょうか。
それとも、組織の中で認められるために用意された、もう一つの制服だったのでしょうか。
スーツは、女性を守る鎧でもあった
もちろん、スーツは多くの女性に自信を与え、社会の中で自分の立場を示す力になってきました。
スーツは勝負服であり、自分を守り、気持ちを奮い立たせる鎧でもあります。
だから私は、鎧そのものを否定したいわけではありません。
問い直したいのは、その鎧が自分の意志で選んだものなのか。
それとも、社会から求められる女性像に合わせるために着せられたものなのか、ということです。
女性が社会の中で力を持つために、男性のように見せる必要はあるのでしょうか。
男性的な服を纏うだけでは、過去の権力構造を、そのままなぞることにもなりかねません。
これまでのブログでお伝えしてきたように、これからはスーツを着る人自身が、明確な意志を持ってスーツを選ぶ時代です。
なぜスーツを着るのか。
その装いによって、何を伝えたいのか。
どのような自分として、相手の前に立ちたいのか。
そこに本人のメッセージが込められていれば、スーツの形はもっと自由に変化していくはずです。
脱ぐのは、スーツではなく「押しつけられたイメージ」
「鎧を脱ぐ」とは、スーツを着ることをやめるという意味ではありません。
「強い女性はこうあるべき」
「仕事のできる女性はこう見えるべき」
社会から押しつけられたイメージを脱ぐことです。
未来のスーツも、勝負服であり、身を守る鎧であり続けるでしょう。
けれど、それは誰かに着せられた鎧ではありません。
自分が進みたい未来のために、自分の意志で選ぶ鎧です。
周囲に認めてもらうために身体を固く覆うのではなく、自分の内側にある力を社会へ届けるために纏う。
そのときスーツは、女性を既存の型へ押し込めるものではなく、その人の可能性を外の世界へ開くものになるのだと思います。
女性の身体も、役割も、変化していく
女性の身体や生き方は、年齢や環境によって変化します。
身体のラインだけではありません。
動き方、声、話し方。
仕事上の役割。
人との向き合い方。
相手に与えたい印象。
これから発揮したい力。
そのすべてが、その人の装いに関係しています。
だからこそ、決められた型へ身体を押し込めるのではなく、そのときの自分に合った服を選ぶことが大切です。
身体を締めつけることで生まれる緊張感ではなく、自然に呼吸できること。
肩を大きく見せることで得る威圧感ではなく、存在そのものから信頼が伝わること。
「正しく見せる」ための服ではなく、その人の考えや生き方が、無理なく伝わる服であること。
これからの女性のスーツには、そのような役割が求められているのではないでしょうか。
女性だからこそ表現できる、美しさと色気
女性のスーツを考えるうえで、女性の身体が持つ美しさを消してしまう必要はありません。
身体の曲線。
柔らかさとしなやかさ。
歩いたときに生まれる布の揺れ。
首元や手首に宿る繊細さ。
声や表情、所作から伝わる温度。
それらも、その人が持つ大切な魅力です。
ただし、ここでいう色気は、肌を多く見せることや、誰かの視線を集めるためのものではありません。
自分の身体を否定せず、自分の存在を丁寧に扱っている人から自然ににじみ出る、生命力のようなものです。
隠しすぎない。
見せすぎない。
強調しすぎない。
節度の中に美しさがあり、品の中に色気がある。
その絶妙なバランスが、威圧感とは異なる、静かで豊かな存在感を生み出します。
強さを示すために女性らしさを消すのでもなく、女性らしく見せるために仕事上の信頼を手放すのでもない。
知性、品格、しなやかさ、色気。
それらが矛盾することなく、一人の女性の中に同時に存在できるスーツが必要なのだと思います。
男性的でも、女性的でもない
男性的なスーツから解放されるというと、女性らしい色や柔らかなデザインを取り入れることだと思われるかもしれません。
しかし、目指したいのは、男性的なものを、単純に女性的なものへ置き換えることではありません。
基準となるのは、
その人のエネルギーに合っているかどうか。
静かな強さを持つ人。
人を包み込む温かさを持つ人。
新しい道を切り開く力を持つ人。
人と人をつなぐ力を持つ人。
一人ひとりが持つ魅力も、これから発揮したい力も異なります。
男性的か、女性的か。
強く見えるか、柔らかく見えるか。
その二つに分けるのではなく、その人が持つエネルギーを、最も自然に表現できているかどうか。
それが、これからのスーツを考えるための新しい基準になります。
鎧を、自分で選び直す
強く見せるための大きな肩。
間違いのない人に見せるための襟。
隙のない自分を演出するために、身体を固く包むシルエット。
それらが必要だった時代もありました。
けれど、これからの女性は、社会から与えられた鎧を纏い続けなくてもよいのだと思います。
鎧を脱ぐことは、無防備になることでも、弱くなることでもありません。
自分を大きく見せなくても、存在そのものに力があると知ること。
そして、何を守り、何を表現し、どのような未来へ進むのかを自分で決め、そのための鎧を選び直すことです。
正す襟、権威の肩、逞しく凛々しい強さを示すボディーを解放する。
何も足さなくても、存在そのものの魅力を引き立たせる服へ。
未来の女性のスーツは、その人の身体、役割、思想、そしてエネルギーを起点に、最初から設計される服です。
自分ではない誰かになるためではなく、本来の自分として前へ進むために。
女性のスーツは今、社会から着せられた鎧から、自分の意志で選び、自分の存在を伝える鎧へと変わり始めています。
創造するのは、リーダーである、あなたです。
自分の意志で選ぶスーツを、ともにつくる方へ
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そんなオーダースーツを、ともにつくり、届けていきたいと思っています。
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